「…っていうことがあったんだよ」 飲んでいたビールを置く。 俺は思わずこめかみを押さえて呻いた。 「歯がタイプってどういうことです…完全に変なフェチみたいになってるじゃないですか!」 「あーごめんごめん」 ごめんと言いながら高耶さんはケラケラ笑っている。まったくこの人は。 今日も今日とて家に来ている彼は、何故かソファーの上で乾かした洗濯物を畳んでいる。別に家事なんてしなくてもいいのに。 でも洗濯物をちょこちょこ畳む高耶さんを見るのが楽しいので口は出さない。 「じゃあ実際どんなタイプの人が好きなんだよ」 聞かれると思った。ただのお喋りなのであまり深く考えずに口を開く。 「料理上手は基本ですね。…年下とか」 「年下かー。年上好きなイメージだけどなぁ」 「ちょっと生意気で粗暴だけど、俺にだけ甘えてくる…とか」 「あー可愛いーなーそれ」 「目つきが悪かったらなお良いですね」 「なんだそりゃ」 二個目の缶ビールを開ける。 「高耶さんのタイプは?」 「えっ」 自分も聞かれるとは思わなかったんだろう。俺のシャツを畳みながら考えこんでしまった。 「俺は…」 「はい」 「俺は…直江みたいな人がいい」 「…………」 「あっいや!直江が好きってことじゃなくな!?尊敬…できる人…みたいな…」 最後の方はゴニョゴニョと消え入りそうな小声になる。 彼は真っ赤になった顔を隠すように俯いた。あまりにも可愛くて、押し倒したくなる衝動を必死にこらえた。 なんだこの可愛い人は。 学校での大人っぽい顔はなりを潜め、目の前の彼は羞恥に耐えきれず怒った表情になってしまう。 無意識に庇護欲を掻き立てる彼を、思わず抱きしめた。 next |